なんとなく、心がざわつく日がある。
理由ははっきりしないのに、どこか落ち着かない。
そんなとき、私は湖を思い出す。
静かな湖。
風がなければ、水面は鏡のように空を映している。
雲の形も、光の揺らぎも、そのままそこにある。
まるで、もうひとつの世界が広がっているみたいに。
湖のいいところは、なにも求めてこないところだと思う。
海みたいに大きな音も立てないし、
川みたいにどこかへ急いで流れていくこともない。
ただ、そこにあるだけ。
その「ただそこにある」という感じが、
少し疲れた心にはちょうどいい。
湖のほとりに座って、ぼんやりと水面を眺めていると、
頭の中のいろんな考えが、少しずつ静かになっていく。
あれをやらなきゃ、とか。
これでよかったのかな、とか。
そんな言葉たちが、水の奥に沈んでいくみたいに。
代わりに残るのは、風の音とか、
遠くで鳴く鳥の声とか、
自分の呼吸のリズムとか。
それだけで、なんだか十分な気がしてくる。
特別なことはなにも起きていないのに、
なぜか少しだけ、心が軽くなる。
湖はきっと、なにかを与えてくれる場所じゃなくて、
いらないものを静かに引き受けてくれる場所なんだと思う。
だからまた、ざわついたときには思い出す。
あの静かな水面と、
何も言わずにそこにいてくれる景色を。
そして少しだけ、深呼吸をする。
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