朝からずっと降っていた雨が、夕方になってやっとやんだ。
窓を開けると、湿った空気の中に少しだけ冷たい風が混ざっている。
若いころは、雨なんてただの「面倒な天気」だった。
服は濡れるし、靴は汚れるし、いいことなんて何もないと思っていた。
でも中年になってくると、不思議なもので感じ方が変わってくる。
雨があがったあとの空気は、どこかやさしい。
アスファルトの匂いと、どこからか漂ってくる土の匂い。
それを吸い込むと、胸の奥がすっと軽くなる。
外に出てみると、雲のすき間から夕日が顔を出していた。
濡れた道路がオレンジ色に光っている。
「なんか、いいな」
思わずそんな言葉が口から出る。
誰に言うわけでもなく、ただ一人で。
遠くで子どもが水たまりを踏んで遊んでいる。
それを見ているだけで、少しだけ心がゆるむ。
大人になると、悩みも責任も増えていく。
気がつけば、肩に力が入ったまま毎日を過ごしている。
でも、雨があがったあとの静かな時間は、
「まあ、そんなに急がなくてもいいか」と思わせてくれる。
コンビニでコーヒーを買って、ゆっくり歩いて帰る。
たったそれだけのことなのに、今日は少しだけ気分がいい。
若いころには気づかなかったけれど、
こういう小さな時間こそ、実は一番の癒しかもしれない。
雨がやんだ空を見上げながら、
中年の男は、静かに深呼吸をした。
「明日も、まあ頑張るか」
そう思えたなら、それだけで十分いい一日だった。
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