2026年3月6日金曜日

久しぶりに雨があがったときの話

朝からずっと降っていた雨が、夕方になってやっとやんだ。
窓を開けると、湿った空気の中に少しだけ冷たい風が混ざっている。

若いころは、雨なんてただの「面倒な天気」だった。
服は濡れるし、靴は汚れるし、いいことなんて何もないと思っていた。

でも中年になってくると、不思議なもので感じ方が変わってくる。

雨があがったあとの空気は、どこかやさしい。
アスファルトの匂いと、どこからか漂ってくる土の匂い。
それを吸い込むと、胸の奥がすっと軽くなる。

外に出てみると、雲のすき間から夕日が顔を出していた。
濡れた道路がオレンジ色に光っている。

「なんか、いいな」

思わずそんな言葉が口から出る。
誰に言うわけでもなく、ただ一人で。

遠くで子どもが水たまりを踏んで遊んでいる。
それを見ているだけで、少しだけ心がゆるむ。

大人になると、悩みも責任も増えていく。
気がつけば、肩に力が入ったまま毎日を過ごしている。

でも、雨があがったあとの静かな時間は、
「まあ、そんなに急がなくてもいいか」と思わせてくれる。

コンビニでコーヒーを買って、ゆっくり歩いて帰る。
たったそれだけのことなのに、今日は少しだけ気分がいい。

若いころには気づかなかったけれど、
こういう小さな時間こそ、実は一番の癒しかもしれない。

雨がやんだ空を見上げながら、
中年の男は、静かに深呼吸をした。

「明日も、まあ頑張るか」

そう思えたなら、それだけで十分いい一日だった。



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