夕方の道を歩いていると、
ふと一台の自転車が目に入りました。
特別に新しいわけでも、
目立つ色をしているわけでもない、
どこにでもありそうな自転車です。
けれど、その日は少しだけ違って見えました。
沈みかけた夕日が、
自転車のハンドルや車輪にそっと当たって、
細い光を返していたのです。
まるで一日の終わりに、
「今日もおつかれさま」と
静かに言ってくれているようでした。
自転車は、ただそこに止まっているだけでした。
誰かを待っているのか、
もう役目を終えて休んでいるのか、
それは分かりません。
でも、夕日の中にある自転車には、
不思議とやさしい空気がありました。
急がなくてもいい。
遠くまで行けなくてもいい。
ゆっくり進めばいい。
そんなことを、
何も言わずに教えてくれているようでした。
車輪に残る小さな光。
影になったサドル。
少しだけ風に揺れる草。
その全部が、
夕方の静けさの中で、
やわらかくひとつになっていました。
自転車を見ると、
どこかへ行けそうな気がします。
遠い場所でなくても、
近所の道でも、
少しだけ知らない角を曲がるだけでもいい。
自分の力で、
少しずつ前へ進んでいける。
その素朴な感じが、
なんだか心を軽くしてくれます。
夕日に照らされた自転車は、
派手な景色ではありません。
でも、何気ない日常の中にある、
小さな癒しのように見えました。
今日が少し疲れる日だったとしても、
帰り道にこんな風景を見つけられたなら、
それだけで少し救われる気がします。
自転車は今日も、
静かにそこにあります。
夕日の光を受けながら、
また誰かがペダルをこぎ出す時間を、
やさしく待っているようでした。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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