都会の海には、
自然の海とは少し違う静けさがあります。
ビルの間を抜けて歩いていくと、
急に視界が開けて、
水面が見える瞬間があります。
その景色を見るだけで、
少しだけ呼吸が深くなるような気がします。
海は遠くの観光地にあるものだと、
どこかで思っていました。
けれど、
都会の中にも海はあります。
電車の音が遠くに聞こえて、
車が走っていて、
人の声もどこかから聞こえてくる。
それでも水面は、
そんな忙しさを全部受け止めるように、
ゆっくり揺れています。
都会の海は、
完全な静寂ではありません。
むしろ、
生活の音に囲まれたまま、
その中で静かに存在している海です。
そこが少し、
今の自分には合っているように感じます。
何もかも忘れられる場所ではなく、
忘れられないものを抱えたまま、
少し休める場所。
都会の海辺に立つと、
風が思ったよりやさしく吹いてきます。
潮のにおいは強すぎず、
コンクリートの道や、
港の柵や、
遠くのビルの光と混ざっています。
夕方になると、
水面に街の光が映りはじめます。
きらきらしすぎない光が、
波に揺られて、
少しずつ形を変えていきます。
それを見ていると、
一日がうまくいかなかった日でも、
まあ、今日はここまででいいかと思えます。
都会の海には、
派手な癒しはありません。
南国のような青さも、
絵はがきのような美しさも、
いつもあるわけではありません。
でも、
日常のすぐそばにあるからこそ、
ふとした時に助けてくれる感じがあります。
仕事帰りでも、
買い物の途中でも、
少し遠回りすれば見に行ける海。
それだけで、
心の逃げ道がひとつ増えたような気がします。
都会で暮らしていると、
空も、道も、人の流れも、
少し狭く感じることがあります。
でも海の前に立つと、
目の前だけは広くなります。
その広さが、
心の中の詰まった部分を、
少しだけほどいてくれます。
癒される都会の海。
それは、
遠くへ行けない日にも、
今いる場所から少しだけ自由になれる景色なのかもしれません。
今日もまた、
街の音の向こうで、
海は静かに揺れています。
何かを急かすこともなく、
何かを責めることもなく、
ただそこにあります。
その静かな揺れを見ているだけで、
もう少しだけ明日も歩いてみようと、
そんな気持ちになれました。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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