丘の上いっぱいに、カーネーションが咲いていた。
赤い花、ピンクの花、白い花。
それぞれが風に揺れながら、静かに空を見上げている。
派手に咲いているわけではないのに、
そこに立っているだけで、胸の奥が少しやわらかくなる。
カーネーションという花には、
どこか「ありがとう」に似た空気がある。
誰かに渡すための花。
誰かを思い出すための花。
言葉にできなかった気持ちを、そっと代わりに持ってくれる花。
丘を歩いていると、
足元の花たちが小さく揺れて、
「急がなくていいよ」と言ってくれているようだった。
風が吹くたびに、花の色が波のように動く。
赤はあたたかく、
ピンクはやさしく、
白は静かに心を休ませてくれる。
何か特別なことが起きる場所ではない。
ただ、花が咲いていて、風が吹いていて、空が広い。
それだけなのに、
疲れていた気持ちが少しずつほどけていく。
カーネーションの丘には、
大きな励ましよりも、
小さなぬくもりが似合う。
忘れていたやさしさを思い出すような、
誰かにありがとうと言いたくなるような、
そんな静かな時間が流れていた。
帰るころには、
心の中にも一輪だけ、
カーネーションが咲いているような気がした。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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