龍神様を祀っていると、
言われている神社がある。
境内には、
たくさんの風鈴が吊るされていて、
静かな日は、
ほとんど音がしない。
その日も、
風はなかった。
木々は動かず、
空気は、
止まっているようだった。
それなのに、
いきなり、
風鈴が鳴りだした。
一つではなく、
いくつも。
偶然だと、
言えばそれまでだ。
気温の変化か、
人の動きか、
理由はいくらでも考えられる。
それでも、
あの瞬間の音は、
少し違って聞こえた。
軽い音ではなく、
空気ごと揺らすような、
はっきりした音だった。
誰かに、
呼ばれたわけでもない。
何かを、
願っていたわけでもない。
ただ、
そこに立っていただけだ。
だからこそ、
意味を考えすぎないようにした。
龍神様が来たのか、
ただの風だったのか。
答えは、
決めなくていい。
風鈴の音が、
頭の中を通り抜けて、
何かを置いていった。
それが、
安心だったのか、
区切りだったのかは、
まだわからない。
でも、
あの音を聞いたあと、
少しだけ、
歩きやすくなった。
それだけは、
確かだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿