2026年2月9日月曜日

風鈴が鳴ったときの話

龍神様を祀っていると、
言われている神社がある。
境内には、
たくさんの風鈴が吊るされていて、
静かな日は、
ほとんど音がしない。

その日も、
風はなかった。
木々は動かず、
空気は、
止まっているようだった。

それなのに、
いきなり、
風鈴が鳴りだした。
一つではなく、
いくつも。

偶然だと、
言えばそれまでだ。
気温の変化か、
人の動きか、
理由はいくらでも考えられる。

それでも、
あの瞬間の音は、
少し違って聞こえた。
軽い音ではなく、
空気ごと揺らすような、
はっきりした音だった。

誰かに、
呼ばれたわけでもない。
何かを、
願っていたわけでもない。
ただ、
そこに立っていただけだ。

だからこそ、
意味を考えすぎないようにした。
龍神様が来たのか、
ただの風だったのか。
答えは、
決めなくていい。

風鈴の音が、
頭の中を通り抜けて、
何かを置いていった。
それが、
安心だったのか、
区切りだったのかは、
まだわからない。

でも、
あの音を聞いたあと、
少しだけ、
歩きやすくなった。
それだけは、
確かだった。

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