夕方の公園に、ひとつだけブランコが揺れていた。
誰かが乗っていたわけでもないのに、
風に押されるように、ゆっくり前へ、ゆっくり後ろへ動いていた。
その音が、なんだかよかった。
きい、きい、と小さく鳴るたびに、
急いでいた気持ちが少しずつほどけていく。
ブランコを見ると、子どものころのことを思い出す。
高くこぎすぎて少し怖くなったこと。
夕方になっても、まだ帰りたくなかったこと。
空に近づける気がして、何度も足を伸ばしたこと。
大人になると、ブランコに乗ることは少なくなる。
でも、あの揺れ方だけは、なぜか忘れない。
前へ進んで、また戻る。
戻ったと思ったら、また少し前へ行く。
それは、毎日の気持ちにも少し似ている。
うまく進める日もあれば、
同じ場所に戻ってきたように感じる日もある。
でも、ブランコは止まらない。
小さくても、ちゃんと揺れている。
夕焼けの中で揺れるブランコを見ていると、
無理に遠くまで行かなくてもいい気がしてくる。
今日は今日の風にまかせて、
少しだけ揺れていればいい。
そんなふうに思えるだけで、
心は静かに軽くなる。
ブランコはただそこにあるだけなのに、
なぜか人の心を、子どものころの場所へ連れていってくれる。
あのゆっくりした揺れの中には、
忘れていたやさしさが、まだ残っているのかもしれない。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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