2026年5月8日金曜日

癒さるブランコ

癒さるブランコ

夕方の公園に、ひとつだけブランコが揺れていた。

誰かが乗っていたわけでもないのに、
風に押されるように、ゆっくり前へ、ゆっくり後ろへ動いていた。

その音が、なんだかよかった。

きい、きい、と小さく鳴るたびに、
急いでいた気持ちが少しずつほどけていく。

ブランコを見ると、子どものころのことを思い出す。
高くこぎすぎて少し怖くなったこと。
夕方になっても、まだ帰りたくなかったこと。
空に近づける気がして、何度も足を伸ばしたこと。

大人になると、ブランコに乗ることは少なくなる。
でも、あの揺れ方だけは、なぜか忘れない。

前へ進んで、また戻る。
戻ったと思ったら、また少し前へ行く。

それは、毎日の気持ちにも少し似ている。
うまく進める日もあれば、
同じ場所に戻ってきたように感じる日もある。

でも、ブランコは止まらない。
小さくても、ちゃんと揺れている。

夕焼けの中で揺れるブランコを見ていると、
無理に遠くまで行かなくてもいい気がしてくる。

今日は今日の風にまかせて、
少しだけ揺れていればいい。

そんなふうに思えるだけで、
心は静かに軽くなる。

ブランコはただそこにあるだけなのに、
なぜか人の心を、子どものころの場所へ連れていってくれる。

あのゆっくりした揺れの中には、
忘れていたやさしさが、まだ残っているのかもしれない。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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