夏の午後、窓から入る光が、金魚鉢の水を静かに照らしていました。
透明な水の中では、赤い金魚が長い尾びれを揺らしながら、ゆっくりと泳いでいます。
急ぐこともなく、どこかへ向かう必要もなく、ただ水の流れに身を任せていました。
丸い鉢の中を一周すると、水草のそばで少し立ち止まります。
そして思い出したように向きを変え、今度は小さな泡を追いかけていきました。
水面には、窓の外の青空と白い雲が、かすかに映っています。
金魚が泳ぐたびに、その空がやさしく揺れました。
外では蝉が鳴いているのに、金魚鉢のまわりだけは時間がゆっくり流れているようでした。
何も考えずに、その姿を眺めます。
赤い体が光を受けて輝き、薄い尾びれが水の中で花びらのように広がります。
見ているうちに、胸の中に残っていた小さな疲れも、水に溶けていくような気がしました。
金魚は、人の悩みを知りません。
明日の予定も、昨日の失敗も気にせず、目の前の水の中を静かに泳いでいます。
それでいいのかもしれません。
少しくらい立ち止まり、何も考えない時間があってもいい。
金魚のように、ただゆっくりと息をして、流れる光を眺めているだけの日があってもいいのです。
夕方になると、部屋の光は少しずつ淡くなりました。
それでも金魚は変わらず、静かな水の中を泳ぎ続けています。
その小さな姿を見ていると、今日という一日も、そんなに悪いものではなかったと思えました。
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