2026年7月11日土曜日

癒されるイチハツの丘

癒されるイチハツの丘

春の終わりが近づくころ、町から少し離れた場所に、紫色の花が咲く小さな丘があります。

そこに咲いているのは、イチハツという花です。

まっすぐに伸びた葉の間から、淡い紫や青紫の花が静かに顔を出しています。

華やかすぎる花ではありません。

けれど、丘を渡る風に揺れる姿を見ていると、なぜか足を止めたくなります。

イチハツの丘には、細い土の道が一本だけ続いていました。

私は花を踏まないように、ゆっくりと丘を登っていきます。

道の両側では、紫色の花びらが春の光を受けて、やさしく輝いていました。

風が吹くたびに、細長い葉が触れ合い、小さな音を立てます。

その音は、遠くで降っている雨のようにも聞こえました。

丘の上まで来ると、町の屋根や田んぼが遠くに見えました。

空には白い雲がゆっくりと流れています。

急いでいるものは、どこにもありません。

私は花の近くに腰を下ろし、しばらく何も考えずに景色を眺めました。

毎日の中では、答えを急いでしまうことがあります。

今日中に決めなければならないこと。

早く終わらせなければならないこと。

けれど、この丘に咲くイチハツは、誰かと競うこともなく、自分の季節に合わせて花を開いていました。

早く咲く花もあれば、まだ小さなつぼみのまま風に揺れている花もあります。

それでも、どの花も同じように春の丘を彩っていました。

人も、それでいいのかもしれません。

少し遅くても、立ち止まっていても、自分の時間の中で進んでいけばいい。

そんなことを、紫色の花が静かに教えてくれているようでした。

帰り道、振り返ると、丘一面のイチハツが風に揺れていました。

見送ってくれているようにも見えました。

また心が疲れたときは、この丘へ来ようと思います。

静かな風と、やさしい紫色の花に会うために。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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