2026年8月13日木曜日

癒される線香花火

癒される線香花火

夕暮れが少しずつ濃くなっていく庭先で、線香花火に火をつける。マッチの先から伝わった小さな炎が、和紙で包まれた先端にじんわりと灯る瞬間、なんともいえない静けさが辺りを包みます。

線香花火の魅力は、その儚さにあるのかもしれません。パチパチと弾ける火花は最初は勢いよく、まるで小さな菊の花が咲いたように広がります。けれど時間が経つにつれて火花は徐々に落ち着き、最後はぽとりと火の玉が落ちて終わりを迎える。その一連の変化を、ただじっと見つめる時間が、不思議と心を落ち着かせてくれます。

子どもの頃、縁側に座って家族と一緒に線香花火をした記憶がある人も多いのではないでしょうか。誰が一番長く火花を持たせられるか、そんな他愛もない競争をしながら、蚊取り線香の匂いと一緒に過ぎていった夏の夜。大人になった今、あらためて線香花火を手にすると、あの頃の穏やかな時間がふっと蘇ってくるようです。

線香花火には「牡丹」「松葉」「柳」「散り菊」という四つの段階があると言われています。火花が丸くまとまる牡丹の時期から、細く鋭く伸びる松葉、そしてゆらゆらと垂れ下がる柳、最後に静かに散っていく散り菊まで。その移ろいを知ってから眺めると、たった数十秒の出来事がまるで一編の物語のように感じられます。

派手な打ち上げ花火とは違い、線香花火は一人でも、二人でも、静かに向き合える花火です。声を張り上げることも、拍手をすることもなく、ただ小さな光の変化を見守るだけ。その控えめな美しさこそが、忙しない毎日を送る私たちの心をそっとほぐしてくれるのかもしれません。

今年の夏は、大きな花火大会に出かけるのもいいですが、たまには庭先やベランダで線香花火を灯し、火花が落ちるまでの短い時間に身を委ねてみるのもおすすめです。何も考えず、ただ光の揺らぎを眺めるだけで、心が少しずつ軽くなっていくのを感じられるはずです。


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