2026年5月17日日曜日

癒されるアゲハ蝶の丘

癒されるアゲハ蝶の丘

少しだけ疲れた日には、
高い場所へ行きたくなることがあります。

遠くまで見える場所に立つと、
自分の中で固まっていたものが、
少しずつほどけていくような気がするからです。

その丘には、
春と夏のあいだのような、
やわらかな風が吹いていました。

草は低く揺れて、
小さな花がところどころに咲いていて、
空は広く、雲はゆっくり流れていました。

何か特別な場所というわけではありません。

大きな観光地でもなく、
誰かが名前をつけた有名な丘でもなく、
ただ、静かにそこにある丘でした。

けれど、そこにはアゲハ蝶がいました。

黒と黄色の模様を持った一匹のアゲハ蝶が、
草花の上をふわりふわりと飛んでいました。

急ぐこともなく、
迷うこともなく、
風に少し身をまかせながら、
丘の上をやさしく舞っていました。

その姿を見ていると、
こちらまで呼吸がゆっくりになっていきます。

アゲハ蝶は、
何かを説明してくれるわけではありません。

励ましてくれるわけでも、
答えをくれるわけでもありません。

ただ、そこにいて、
ただ、羽を広げて、
ただ、光の中を飛んでいるだけです。

でも、その何も言わない感じが、
なぜかとてもやさしく思えました。

丘の上では、
小さなことが小さなことに戻っていきます。

頭の中で大きくなりすぎていた不安も、
胸の奥で重くなっていた気持ちも、
風にあたりながら少しずつ薄くなっていきます。

アゲハ蝶は、
花から花へと移りながら、
まるで見えない道を知っているように飛んでいました。

その道は、
人には見えないけれど、
蝶にはちゃんと見えているのかもしれません。

人生にも、
そんな道があるのかもしれないと思いました。

今は見えなくても、
ゆっくり進んでいるうちに、
いつの間にか次の場所へたどり着いている。

そんなふうに、
急がなくてもいい時間が、
この丘には流れていました。

アゲハ蝶の羽が光を受けて、
一瞬だけきらりと見えました。

その小さな輝きは、
派手なものではないけれど、
心に残るには十分でした。

癒しというのは、
大げさなものではないのかもしれません。

静かな丘。

ゆれる草。

流れる雲。

そして、
光の中を飛ぶ一匹のアゲハ蝶。

それだけで、
少しだけ明日も歩いていけるような気がしました。

癒されるアゲハ蝶の丘は、
どこか遠くにある特別な場所ではなく、
心が静かになったときに見つかる、
小さな風景なのかもしれません。


ここまで読んでくれて、ありがとうございます

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