昼間は見えていた道も、建物も、電線も、静かな色に沈んでいきます。
そのかわり、空の奥に小さな光がひとつ、またひとつと浮かびます。
星です。
大きな声を出すわけでもなく、こちらに何かを言ってくるわけでもなく、ただ静かに光っています。
その静けさが、なぜか心を落ち着かせてくれることがあります。
疲れた日ほど、星はきれいに見える気がします。
忙しくしていると、自分の心がどこにあるのか分からなくなることがあります。
やらなければいけないこと。
気にしてしまうこと。
うまくいかなかったこと。
そういうものが頭の中に積もって、部屋の空気まで少し重く感じる夜があります。
そんなとき、窓を開けて空を見ると、星が小さく光っています。
それは、とても頼りない光です。
街の灯りに負けそうで、雲に隠れそうで、見落としてしまいそうなほど小さい光です。
でも、その小ささがいいのかもしれません。
強く励まされるより、静かにそばにいてくれるもののほうが、心にしみる夜があります。
星は、こちらの事情を聞きません。
何に悩んでいるのかも、何を間違えたのかも、何を頑張ったのかも、何もたずねません。
ただ、遠い場所から同じように光っています。
それだけで、少し息がしやすくなります。
星を見ていると、時間の流れがゆっくりになります。
さっきまで急いでいた気持ちが、少しずつほどけていきます。
今日一日の小さな失敗も、言えなかった言葉も、心の中で何度も繰り返していた考えも、夜空の広さの中では少しだけ小さく見えます。
消えるわけではありません。
でも、抱え方が少し変わります。
星は、遠い昔からそこにあった光です。
今見えている星の光も、長い時間をかけて届いたものかもしれません。
そう考えると、今の自分の悩みも、今日だけで答えを出さなくてもいいような気がしてきます。
急がなくてもいい。
焦らなくてもいい。
小さくても、消えずに光っていればいい。
そんなふうに、星は何も言わずに教えてくれます。
夜の道を歩いていると、家々の窓に灯りがともっています。
その上に、星がいくつか見えます。
人の暮らしの灯りと、空の遠い光。
どちらも違う場所で、静かに夜を照らしています。
その景色を見ると、自分もこの夜の中で、ちゃんと息をしているのだと思えます。
特別なことがなくてもいい。
大きな変化がなくてもいい。
静かな夜に、星を見上げる時間が少しあるだけで、心は思ったより休まります。
癒される星とは、きっと一番明るい星のことではありません。
名前を知っている星でも、特別な星座でもないのかもしれません。
疲れた夜に、ふと見上げた空で見つけた小さな光。
その瞬間だけ、自分の心を少し軽くしてくれた星。
それが、自分にとっての癒される星なのだと思います。
明日もまた、いろいろなことがあるかもしれません。
思い通りにいかないことも、少し疲れることもあるかもしれません。
でも、夜になれば空は静かに広がります。
そしてどこかに、小さな星が光っています。
その光を見つけられたら、今日はそれだけで十分です。
心を急がせず、静かに息をして、また少しずつ歩いていけばいい。
星は今夜も、遠くからやさしく光っています。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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