2026年7月1日水曜日
癒される山の中にある家
山の中に、ぽつんと一軒の家がある。
大きな道路から少し離れて、細い坂道をゆっくり上った先に、その家は静かに建っている。
まわりには背の高い木々が並び、風が吹くたびに葉がさらさらと音を立てる。
その音は、誰かが話しかけてくるようで、けれど何も急がせない。
都会にいると、時間はいつも前へ前へと進んでいく。
信号が変わり、スマホが鳴り、予定が重なり、気づけば一日が終わっている。
でも山の中にある家では、時間の流れが少しだけ遅くなる。
朝は、鳥の声で始まる。
カーテンを開けると、窓の外には薄い朝霧が広がっている。
木々のあいだから淡い光が差し込み、庭の草に小さな水滴が光っている。
それだけの景色なのに、なぜか心が静かになる。
台所では、お湯が沸く音がする。
湯気の向こうに見える窓の外には、山の緑が広がっている。
特別な朝ごはんでなくてもいい。
あたたかいご飯と味噌汁、少しの漬物があれば、それだけで十分だと思える。
昼になると、家のまわりは明るい緑に包まれる。
木漏れ日が庭に落ち、古い縁側にやわらかな影を作る。
縁側に腰かけていると、遠くで川の音が聞こえる。
見えない場所を流れている小さな川。
その音を聞いているだけで、胸の中にあったざわざわが少しずつほどけていく。
山の中の家には、派手なものは何もない。
大きな看板も、人の声も、急ぐ足音もない。
あるのは、木の匂いと、土の匂いと、風の音。
そして、自分の呼吸を思い出せるような静けさだけ。
夕方になると、山の色が少しずつ変わっていく。
明るかった緑は深くなり、空は淡い橙色に染まる。
家の窓に夕日が映り、古い木の壁がやさしく光る。
その景色を見ていると、今日一日を何か大きなものに守られて過ごしたような気持ちになる。
夜は、驚くほど静かだ。
外灯の少ない山の中では、空に星がよく見える。
窓を少し開けると、冷たい空気が部屋に入ってくる。
遠くで虫の声が聞こえ、家の中では小さな明かりだけが灯っている。
何かを頑張らなくてもいい。
誰かに追いつかなくてもいい。
山の中にある家は、そんなふうに静かに教えてくれる。
疲れた心は、大きな言葉で励まされるより、こういう場所で黙って休むほうがいい時がある。
窓の外に緑があり、そばに温かいお茶があり、夜になれば星が見える。
それだけで、人は少し元気を取り戻せる。
山の中にある家は、特別な楽園ではない。
けれど、静かに息をして、今日の自分をそのまま受け止めてくれる場所だ。
いつか心が少し疲れたら、そんな家を思い浮かべてみる。
木々に囲まれた小さな家。
朝霧の庭。
縁側に落ちる木漏れ日。
遠くで聞こえる川の音。
その景色を思うだけで、心の中に小さな山の風が吹いてくる。
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