2026年10月6日火曜日

癒される秋夜の静けさと星のまたたき

癒される秋夜の静けさと星のまたたき

 日が落ちるのが、いつの間にか早くなりました。

夕飯の片づけを終えて窓を開けると、昼間の名残の熱はもうどこにもなく、ひやりとした空気が頬をなでていきます。ほんの少し前まで、夜は蒸し暑くて、虫の声もどこか騒がしかったのに。今夜の外は、まるで音がひとつずつ畳まれていったように、静かです。

上着を一枚はおって、ベランダに出てみました。

手すりに両手をのせると、金属がひんやりとしています。遠くで犬が一度だけ短く鳴いて、それきり、また静けさが戻ってきました。どこかの家の窓から、食器の触れ合う小さな音がかすかに聞こえます。誰かの夜が、同じようにゆっくり進んでいるのだと思うと、それだけで少し安心するから不思議です。

秋の夜は、音がやさしい

足もとの草むらから、虫の声が聞こえてきます。

夏の盛りには、あんなに賑やかだったのに、いまは数も減って、ひとつひとつの声がくっきりと澄んでいます。リーン、リーン。間をおいて、また、リーン。まるで、夜の静けさに小さな鈴をそっと置いているみたいです。

秋の夜の音は、耳に刺さりません。
遠くの電車の走る音も、風が木の葉をゆらす音も、すべてがやわらかく丸くなって、夜の底へ沈んでいきます。

深く息を吸うと、冷えた空気の奥に、どこか乾いた草の匂いが混じっていました。

ふと、空を見上げたら

しばらくぼんやりしていて、ふと思い立って顔を上げました。

そこに、星がありました。

特別な夜ではありません。何かの流星群でも、珍しい天体のイベントでもない、ごくふつうの秋の夜です。それなのに、空はおどろくほど澄んでいて、黒い布をひろげたような空に、ちいさな光が点々とこぼれていました。

じっと見ていると、星は、ほんのわずかにまたたきます。
強くなって、弱くなって、また強くなって。まるで、息をしているみたいに。

あの光は、何年も、何百年も、あるいはもっと長い時間をかけて、ここまで届いたものだと聞いたことがあります。そう思うと、自分の悩みや、今日あった小さな失敗が、ふっと遠くなっていく気がしました。

今日の自分は、たしかにいろいろありました。
うまくいかなかったことも、言いそびれたことも、あります。
けれど、星の前では、そのどれもが、そっと静かに小さくなります。

何もしない、という贅沢

しばらく、ただ立ったまま、空を眺めていました。

スマホは部屋に置いてきました。時計も見ていません。
何かを考えようとするのをやめて、ただ、星のまたたきを目で追います。

「何もしない時間」は、忙しい毎日のなかでは、つい後回しにされてしまいます。でも、こうして夜空の下に立っていると、それこそが、いちばん心に栄養を与えてくれる時間なのかもしれないと思えてきます。

肩の力がすうっと抜けて、呼吸がゆっくりになっていくのが分かりました。
さっきまで頭のなかでぐるぐる回っていたものが、いつのまにか、静かに止まっています。

部屋に戻る前に

どれくらい経ったでしょうか。

体が少しだけ冷えてきたので、そろそろ戻ることにしました。
温かい飲み物を淹れて、毛布にくるまって、今夜は早めに眠ろうと思います。

窓を閉める前に、もう一度だけ空を見上げました。
星たちは、さっきと変わらず、静かにまたたいています。

見ている人がいてもいなくても、秋の夜空は、こうしてずっと、そこにあるのでしょう。
そのことが、なぜだかとても、心強く思えました。

おやすみなさい。
今夜は、星のまたたきの下で、ゆっくり眠れますように。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます


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