2026年10月3日土曜日

癒される秋晴れの日の踏切待ち

 

「カンカンカンカン……」

遠くから聞こえてきた警報音に、自転車のブレーキをそっとかけました。目の前で遮断機がゆっくりと降りてきます。

いつもなら「あ、ついてないな」と思ってしまう踏切待ち。でもその日は、どうしてか少しも嫌な気持ちになりませんでした。

理由は、きっと空です。

秋晴れの空は、待つ時間をやさしくする

見上げると、夏の重たい青とは違う、澄みきった高い空が広がっていました。雲は薄く伸びて、絵筆でさっとなでたよう。空気は乾いていて、頬にあたる風がひんやりと心地いい。

半袖では少し肌寒くて、長袖ではちょっと暑い。そんな秋のはじまりの日差しが、背中をぽかぽかと温めてくれます。

踏切の脇には、風に揺れるススキと、黄色い花をつけたセイタカアワダチソウ。赤とんぼが一匹、遮断機の先端にすっと止まって、羽を休めていました。

電車が来るまでの、なんでもない数十秒

警報音は、ふしぎと落ち着く音です。

急いでいるときは焦らせる音なのに、気持ちに余裕のある日は「あぁ、もうすぐ来るな」と、ちょっとした合図のように聞こえます。

隣には、ランドセルを背負った小さな男の子と、手をつないだおばあちゃん。男の子が「ねえ、電車ブルーかな、グリーンかな」と小声で話していて、おばあちゃんが「どっちかなぁ」とにっこり笑っています。

その会話を聞いているだけで、胸のあたりがふわっと温かくなりました。

自転車の前かごには、さっきスーパーで買ったサツマイモ。「今日の夜は焼き芋にしようかな」なんて考えながら、ぼんやりと線路の先を眺めます。

ガタンゴトン、ゆっくり通り過ぎる秋

やがて、電車が見えてきました。

ガタンゴトン、ガタンゴトン。

窓ガラスが秋の光を反射して、きらりと光ります。車内ではつり革につかまった人たちが、それぞれの時間を過ごしている。本を読む人、うとうとする人、窓の外を眺める人。

風がふわっと髪をなでて、電車は走り去っていきました。

遮断機が上がると、ほんの一瞬だけ、あたりがしんと静かになります。あの静けさも、踏切待ちの好きなところ。

男の子が「ブルーだったー!」と嬉しそうに叫んで、おばあちゃんと一緒に渡っていきました。

「待つ」ことは、ちょっとした休憩時間

毎日がんばっていると、「待つ」という時間をつい無駄に感じてしまうことがあります。

でも、踏切待ちって、考えてみればすごく贅沢な時間かもしれません。

  • スマホを見なくてもいい、ただ空を見上げていい時間
  • 深呼吸をしても、誰にも不思議に思われない時間
  • 季節の匂いや風の温度を、ちゃんと感じられる時間

予定の合間にぽっかりと空いた、数分間の小さな休憩です。

もし次に踏切の前で足止めされたら、「ついてないな」ではなく「ちょっと一息つけるな」と思ってみてください。それだけで、一日の景色が少し変わって見えるはずです。

まとめ

秋晴れの日の踏切待ちが癒される理由は、こんなところにあるのかもしれません。

  • 澄んだ高い空と、やわらかな日差し
  • 風にそよぐススキや、止まっている赤とんぼ
  • 警報音と電車の音が作る、どこか懐かしいリズム
  • 急がなくていい、ただ待つだけの時間

特別な場所に行かなくても、日常のすぐそばに、心がほどける瞬間はあるんですね。

さて、遮断機も上がったので、そろそろ帰ります。今夜は、ほくほくの焼き芋が待っています。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

あなたの毎日にも、のんびりと空を見上げられる踏切待ちの時間が訪れますように。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます

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