秋の朝の海は、ほかの季節よりも少しだけ静かです。
夏のように人の声が響くこともなく、冬のように風が頬を刺すこともありません。ただ、ゆっくりと息をするように、波が寄せては返しています。
まだ空気がひんやりしている時間に、海辺まで歩いてみました。
夜と朝のあいだの色
海に着いたとき、空はまだ完全には明るくなっていませんでした。
水平線の少し上だけが、ほんのりと白く、その上に薄い藍色が広がっています。夜が少しずつほどけて、朝に変わっていく途中の、ごく短い時間です。
この時間の海は、色がとても静かです。
灰色にも、青にも、銀色にも見える水面が、空の明るさに合わせて少しずつ表情を変えていきます。何かを主張するわけではなく、ただそこにあるだけなのに、見ていると肩の力が抜けていきます。
水平線に差す、淡い光
しばらく立っていると、水平線のあたりに、淡い光が差してきました。
オレンジというほど強くなく、金色というほど眩しくもない、桃色と白を溶かしたようなやわらかな光です。
その光が、雲のふちをそっと縁取り、海の表面に細い帯をつくっていきます。波が動くたびに、その帯がちらちらと揺れて、まるで海が小さく笑っているようでした。
秋の朝の光は、触れたら壊れてしまいそうなくらい繊細です。だからこそ、じっと見つめてしまうのかもしれません。
音だけが残る時間
光に見とれていると、いつのまにか、波の音だけが耳に残っていることに気づきます。
寄せて、引いて、また寄せて。
同じ音のようでいて、ひとつとして同じ波はありません。
頭の中にあった予定や、小さな心配事が、その音に混ざって遠くへ流れていくようでした。考えようとしなくても、思い出そうとしなくても、ただ聞いているだけで、心の中が少しずつ静まっていきます。
ひんやりした空気と、あたたかい飲み物
秋の海辺の朝は、思っているより冷えます。
上着の襟を少し立てて、両手で包むようにあたたかい飲み物を持つと、指先からじんわりと熱が広がっていきます。冷たい空気と、手のひらのぬくもり。その differences が、朝の景色をいっそうやさしいものにしてくれます。
ひと口飲んで、ほっと息をつくと、白い息がふわりと海のほうへ流れていきました。
光が昇るほどに、海は目を覚ます
時間が経つにつれて、水平線の光は少しずつ強くなっていきます。
淡い桃色は、やがてやわらかな金色へ。
暗かった水面は、ところどころ明るく透けて、波の形がはっきり見えてきます。
さっきまで眠っていた海が、ゆっくりと目を覚ましていく。そんな感覚でした。
遠くの空には、鳥が一羽、ゆっくり横切っていきます。その小さな影が、光の中を通り抜けて、また見えなくなりました。
何もしない朝の贅沢
忙しい毎日の中では、「何もしない時間」はなかなか持てません。
けれど、秋の朝の海は、何もしなくていいことを許してくれる場所です。上手に過ごす必要も、何かを持ち帰る必要もありません。ただ立って、光と波を眺めているだけで、十分な朝になります。
水平線に差す淡い光は、特別な景色ではないのかもしれません。毎日どこかで、誰にも気づかれず、ひっそりと始まっているものです。
それでも、その光をひとりで受け止めた朝は、不思議と心に残ります。
おわりに
帰り道、振り返ると、海はすっかり明るくなっていました。
さっきまでの淡い光は、もう朝の日差しに変わっています。けれど、あの静かな数分間のことは、きっとしばらく忘れないと思います。
もし、気持ちが少し重たい朝があったら、早起きして海まで出かけてみてください。遠くまで行けなくても、窓から空を眺めるだけでも構いません。
水平線に差す淡い光は、いつだって、やさしく朝を始めてくれます。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
PR
コータのAmazonページへ
コータのAIイラスト、Xページへ
コータのユーチューブページへ
よろしければ、
のぞいてみてください

0 件のコメント:
コメントを投稿