2026年9月15日火曜日
癒される夏の終わりの入り江
夏の終わりが近づく頃、静かな入り江を訪れた。周囲を囲む山々はまだ濃い緑を保っているが、吹き抜ける風にはどこか涼やかな気配が混じっている。真夏の強い日差しは少しだけ和らぎ、水面に反射する光もやわらかく揺れていた。
入り江の水は驚くほど澄んでいて、砂地の底までくっきりと見える。波はほとんどなく、ゆったりとした水面が空の色をそのまま映し込んでいた。青とも灰色ともいえない、夏の終わりらしい少し曖昧な色合いの空が、水面いっぱいに広がっている。
岸辺には小さな漁船が数艘停泊し、ゆらゆらと揺れながら静かな時間を過ごしていた。船体にペンキで書かれた文字はすっかり色褪せていて、この入り江がどれほど長い年月、人々の暮らしを見守ってきたのかを物語っているようだった。
耳を澄ませば、セミの声が少しずつ弱くなり、代わりに秋の虫の声が混じり始めていることに気づく。夏と秋が入り江の中でゆっくりと交代していくような、そんな不思議な時間帯だった。
入り江を囲む小さな漁村には、昔ながらの木造の家々が並び、屋根瓦の上にはトンビが一羽、悠々と旋回していた。時折聞こえる鳥の鳴き声が、静寂をより深く感じさせてくれる。
夕方に近づくと、入り江の水面は少しずつ橙色に染まっていく。太陽が山の稜線に近づくにつれ、空の色は複雑に変化し、雲の輪郭までもがオレンジ色に縁取られていった。その光景を眺めているだけで、一日の終わりと夏の終わりが重なり合うような、特別な余韻を感じることができた。
入り江に佇んでいると、忙しい日常から少し離れて、ただ自然の呼吸に身を委ねているような感覚になる。潮の匂い、風の温度、光の色。そのすべてが、夏から秋へと季節が移り変わる瞬間を静かに教えてくれているようだった。
このような場所に身を置くだけで、心の奥にたまった疲れがゆっくりとほどけていくのを感じる。夏の終わりの入り江は、慌ただしい毎日に小さな休息を与えてくれる、癒しの時間そのものだった。
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