夕方になると、なんとなく無性に会いたくなる景色がある。私にとってそれは、海のすぐそばにある小さな踏切だ。
普段は電車を待つためだけの、なんの変哲もない場所。けれど夕焼けの時間になると、そこはまったく別の顔を見せてくれる。
カンカンという音が合図になる
遮断機が下りて、カンカンという音が鳴り始めると、体がふっと緩む。急いでいたはずの足取りが自然と止まり、目の前に広がる景色に意識が向く。
線路の向こうには海が広がっていて、夕日がちょうど水平線に近づいていく時間帯だと、空も海も同じオレンジ色に染まっていく。踏切の白と黒の縞模様さえも、その光の中では優しい色に見えてくるから不思議だ。
電車が通り過ぎる、その一瞬
やがて電車がやってくる。窓に反射する夕日がキラキラと連続して流れていくのを見ていると、時間がゆっくり進んでいるような、それでいてあっという間のような、不思議な感覚になる。
電車が通り過ぎたあと、遮断機が上がる。カンカンという音が止み、あたりは急に静かになる。海からの風がふわりと吹いてきて、潮の匂いがかすかに鼻をかすめる。
何気ない場所が特別になる瞬間
踏切というのは本来、通り過ぎるためだけの場所だ。でも海と夕焼けが重なるこの瞬間だけは、立ち止まって眺めていたくなる特別な景色に変わる。
スマートフォンで写真を撮ってみても、実際に感じたあの空気感までは写しきれない。だからこそ、その場に立って、風の匂いや音を全身で感じることに意味があるのだと思う。
もし近くに海の見える踏切があったら、夕方の時間に少しだけ足を運んでみてほしい。カンカンという音とともに、心がすっと軽くなる、そんなひとときに出会えるかもしれない。
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