2026年7月14日火曜日
癒される風鈴の道
夏の午後、古い家が並ぶ細い道を歩いていた。
道の両側にある軒先には、透明なガラスの風鈴がいくつもつるされている。
風が通り抜けるたび、ちりん、ちりんと涼しげな音が鳴った。
どの風鈴も、少しずつ違う音を持っている。
高く澄んだ音。
遠くから聞こえるような、やわらかな音。
たくさんの音が重なっているのに、不思議とうるさくは感じなかった。
石畳の道には、夏の日差しと軒先の影が交互に落ちている。
風鈴の短冊が同じ方向へ揺れると、暑かったはずの空気が少しだけ涼しくなったように感じた。
道の途中には、朝顔の鉢や小さな木の椅子が置かれている。
開いた窓の向こうからは、畳の匂いや誰かの暮らす気配が静かに伝わってきた。
急いで歩けば、すぐに通り過ぎてしまうほど短い道だった。
けれど今日は、風鈴が鳴るたびに足を止めた。
風が来るのを待ち、短冊が揺れるのを眺め、そのあとに響く小さな音へ耳を澄ませる。
ただそれだけの時間が、心の中にたまっていた暑さまで冷ましてくれるようだった。
道の終わりで振り返ると、風鈴たちは今も夏の風に揺れていた。
姿が見えなくなってからも、ちりんという音だけが、しばらく耳の奥に残っていた。
また少し疲れた日に、この道を歩いてみたい。
何かを忘れるためではなく、立ち止まることを思い出すために。
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