夕方の空は、気づかないうちに色を変えていきます。
仕事や用事を終えて外に出たとき、さっきまで残っていた茜色が、いつのまにか薄くなっている。そんな瞬間が、わたしはとても好きです。
西の空にはまだ、ほんの少しだけオレンジの名残があります。けれど頭の上のほうを見上げると、空はもう深い青に変わりかけています。藍色でも紺色でもなく、あの「群青」と呼びたくなる、少し透きとおった青です。
そして、その青のどこかに、一番星がいます。
見つける前から、なんとなく「そろそろ出てくるかな」と気配だけがある。目を凝らすと、ぽつんと小さな光が、静かに空に置かれている。あの感じが、たまらなく癒されます。
◆ 帰り道は、一日でいちばんやわらかい時間
朝の道は、どうしても気持ちが急いでいます。昼間は、あれこれ考えごとをしながら歩いています。
でも夕暮れの帰り道は、少し違います。
一日を終えた安心感と、まだ夜になりきらない余白が、ちょうど混ざり合っている。歩く速度も、自然とゆっくりになります。
ふだんは気にもとめない道ばたの景色が、この時間だけは少し特別に見えてきます。
・ 家々の窓に、ぽつぽつと灯りがともっていく
・ 遠くの空に、細い飛行機雲の名残がうっすら残っている
・ 電線や木々の影が、だんだん輪郭だけになっていく
・ どこかの家から、夕ごはんの匂いがふわりと流れてくる
ひとつひとつは、とても小さなことです。けれど、それが重なって、「ああ、今日も一日が終わっていくんだな」という静かな実感になります。
◆ 群青色に染まっていく空は、心の音量をさげてくれる
群青の空を眺めていると、頭の中の音量が少しずつ下がっていくような気がします。
さっきまで気になっていたことや、うまくいかなかったこと、まだ終わっていない用事。そういったものが、空の色と一緒に、ゆっくり遠くへにじんでいく。
何かを解決したわけではないのに、不思議と呼吸が深くなる。それは、夕暮れの空が「今は考えなくていいよ」と言ってくれているからかもしれません。
あの色の前では、がんばらなくていい。ただ歩いて、ただ見上げていればいい。そう思えるのです。
◆ 一番星を探すという、ささやかな楽しみ
一番星は、探しはじめると意外と見つかりません。
「あのあたりかな」と思って見上げても、まだ空が明るすぎて、何も見えない。少し歩いて、もう一度見上げると、さっきまで何もなかった場所に、ちゃんと光がある。
その「いつのまにか、そこにいた」という感じが、いいのです。
誰かに教えられたわけでもなく、ニュースになるわけでもなく、ただ毎日、同じ時間帯に、空のどこかで静かに始まっている。自分が気づいても気づかなくても、一番星はちゃんと光っています。
そう思うと、なんだか肩の力が抜けます。
◆ 帰り道を、ほんの少しだけ丁寧に歩いてみる
もし、今日の帰り道に少しだけ余裕があるなら、次のことを試してみてください。
・ 歩く速度を、いつもより少しだけゆるめてみる
・ スマホを見る前に、一度空を見上げてみる
・ 空の色が、どこからどこへ変わっているかを眺めてみる
・ 一番星の「気配」がしたら、その方向を探してみる
どれも、特別な準備はいりません。一分もかからないことばかりです。
それでも、そのわずかな時間が、一日の終わりの気持ちをやさしく整えてくれます。
◆ 群青の空は、毎日ちゃんとそこにある
忙しい日も、気分が沈む日も、嬉しいことがあった日も、夕暮れの空は変わらずにやってきます。
茜色から群青へ。昼から夜へ。その静かな移り変わりは、毎日くり返されています。
わたしたちがそれに気づく余裕があるかどうか、ただそれだけの違いです。
だから、ほんの少しだけ足をとめて、空を見上げてみる。そうすると、群青の中にぽつんと光る一番星が、「おかえり」と言ってくれているように思えてきます。
今日の帰り道が、どうか穏やかな色に包まれますように。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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