秋の空は、どうしてこんなに高いのでしょう。
ふと見上げたとき、夏のあいだ頭の上にのしかかっていた重たい熱気が、すっかり抜け落ちていることに気づきます。残っているのは、どこまでも澄んだ青と、薄く引き伸ばされた白い雲だけ。それだけで、胸の奥がすっと軽くなる気がします。
湖のほとりで、足を止める
今日は、少し足をのばして静かな湖のほとりまで来ました。
平日の午前中の湖畔は、びっくりするほど静かです。聞こえてくるのは、風が水面をなでる小さな音と、遠くで鳴いている鳥の声くらい。靴の底で砂利がかすかに鳴るたび、自分の足音がやけに大きく感じられて、思わず歩幅がゆっくりになります。
ベンチに腰をおろして、湖に目をやると、そこにもうひとつの空が広がっていました。
水の中に、もうひとつの空
湖面には、青空と雲がそのまま映りこんでいます。
風がないときは、まるで鏡のよう。空の青さも、雲のふくらみも、ほとんど本物と変わらない姿で水の中に浮かんでいます。どちらが上でどちらが下なのか、しばらく眺めていると少し分からなくなってくるほどです。
けれど、ふわりと風が通りすぎると、景色はやわらかくほどけていきます。
雲の輪郭がゆらゆらと波にゆれて、白い絵の具を水に溶かしたように、ゆっくり形を変えていく。ひとつの雲が伸びて、ちぎれて、また寄り集まって。その動きを見ているだけで、時間がとろりと流れていくのを感じます。
ゆらめきを眺める、ぜいたくな時間
何かをするわけではありません。スマホを取り出すこともなく、ただ湖面の雲を目で追うだけ。
ふだんの生活では、「ぼーっとする時間」にどこか後ろめたさを感じてしまいます。でも、こうして揺れる雲を眺めていると、何もしないことそのものが、心にとって必要な栄養なのだと思えてきます。
頭の中でぐるぐる回っていた考えごとも、水面のゆらめきと一緒に、少しずつ形がゆるんでいく。答えを出さなくてもいい、と湖が教えてくれているようです。
秋の青空が教えてくれること
秋の青空は、見上げるたびに「そんなに急がなくていいよ」と言ってくれている気がします。
季節は確実に進んでいて、日が暮れるのも早くなりました。それでも、空はこんなにも穏やかで、雲はこんなにものんびり。自分のペースで流れていいんだ、と思わせてくれます。
湖に映る雲は、風が吹けば揺れ、止めば静かに元の姿を取り戻します。人の心もきっと同じで、揺れたあとにはちゃんと、静けさが戻ってくるのでしょう。
おわりに
もし最近、少し疲れているなと感じたら、近くの水辺まで空を眺めに出かけてみてください。大きな湖でなくても、池でも、川でも、雨上がりの水たまりでも構いません。
水面に映る空は、見上げる空とはまた違った優しさで、心をそっとほぐしてくれます。
澄んだ青空と、湖面にゆらめく雲。
そのやさしい景色が、あなたの今日の疲れを、少しだけ軽くしてくれますように。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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