ふと見上げた空が、思ったより高くて、思ったより青かった。
そんな瞬間に出会うと、胸のあたりがすっとほどけていきます。秋の青空には、そういう不思議な力があるように思います。
秋の空は、どうしてこんなに澄んでいるのか
夏の空は、湿気をたっぷり含んでいて、どこか白っぽくかすんでいます。入道雲がもくもくと立ち上がり、日差しは強く、見上げるだけで少し疲れてしまう日もありました。
ところが秋になると、空気がからりと乾いて、青がぐっと深くなります。空そのものが一段高くなったような、あの感じです。
遠くの山の輪郭まで、くっきりと見える。電線の向こうの雲の縁まで、細かく見える。景色の解像度が上がったようで、いつもの帰り道が少しだけ特別に見えてきます。
ひつじ雲という、のんびり屋さん
そんな青空に浮かんでいるのが、ひつじ雲です。
小さな綿のかたまりが、ぽこぽこと並んでいる雲。本当の名前は「高積雲」といいますが、やっぱり「ひつじ雲」のほうが、ずっとしっくりきます。空の牧場で、白いひつじたちがのんびり草を食べているみたいに見えるからです。
不思議なのは、その動きの遅さです。
じっと見ていても、動いているのかどうか、よくわかりません。それでも、少し目を離してもう一度見上げると、さっきとは並びが変わっている。急がない、焦らない、でも確実に進んでいる。そんな雲の姿に、見ているこちらの呼吸まで、ゆっくりになっていきます。
空を見上げる時間を、持てているだろうか
ふだんの私たちは、下を向いて過ごすことが多いものです。スマホの画面、パソコンのモニター、足元の段差、手元の資料。気づけば一日中、視線は低い場所をうろうろしています。
だからこそ、意識して顔を上げる時間が大切なのだと思います。
首を少し上に向けるだけで、肩の力が抜ける。視線が遠くに伸びると、頭の中のごちゃごちゃが、ほんの少し遠のく。立ち止まる必要も、特別な場所に行く必要もありません。窓から、ベランダから、駅のホームから、空はいつでもそこにあります。
青空とひつじ雲を楽しむ、ささやかな方法
肩の力を抜いて楽しむための、小さなコツをいくつか挙げてみます。
1. 5分だけ、外に出てみる
お昼休みや、洗濯物を取り込むついでで十分です。短い時間でも、空の広さは十分に感じられます。
2. 雲の形に名前をつけてみる
「あれはおにぎりに似ている」「あの子は少し遅れて歩いているひつじだ」など、自由に想像してみる。子どもの頃の遊びが、そのまま大人の癒しになります。
3. 温かい飲み物を片手に眺める
秋の風は、少し冷たいくらいがちょうどいい。湯気の立つお茶やコーヒーを持って、ゆっくり空を見上げると、時間の流れ方が変わります。
4. 何も考えない時間をつくる
「考えない」というのは意外と難しいですが、雲を見ていると自然とできてしまいます。流れていく雲に、頭の中のあれこれも一緒に流してしまいましょう。
空は、毎日ちがう顔をしている
同じ青空でも、昨日と今日では、色も雲の形も違います。朝は少し淡く、昼は深く、夕方になれば金色に染まっていく。毎日見ているはずなのに、同じ空は二度と現れません。
そう思うと、何気なく見上げた一瞬が、少し愛おしくなります。
忙しい日々の中で、空を見る余裕なんてないと感じる日もあるでしょう。それでも、ほんの数秒でいいのです。深呼吸をひとつして、顔を上げてみてください。そこには、ゆっくり流れるひつじ雲が、いつもと変わらず浮かんでいるはずです。
おわりに
秋の青空とひつじ雲は、何かを頑張らなくても、ただそこにあるだけで私たちを癒してくれます。
急がなくても大丈夫。立ち止まってもいい。雲はいつだって、自分のペースで、ゆっくり進んでいるのですから。
今日もどこかで、真っ青な空の下を、白いひつじたちがのんびり歩いています。あなたも少しだけ足を止めて、その様子を眺めてみませんか。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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