日が傾きはじめるころ、ふらりと水辺まで歩いてみました。
特別な予定があったわけではありません。ただ、今日は少しだけ頭の中が騒がしくて、静かな場所で息をつきたかったのです。
水面に残る、最後の光
水辺に着くと、空はまだ淡い橙色を残していました。
その色が水面にもやわらかく溶けていて、空と水の境目が少しだけあいまいに見えます。
ベンチに腰を下ろして、ただ眺める。
それだけのことなのに、肩に入っていた力が、ゆっくりほどけていくのがわかりました。
群青が降りてくる時間
しばらくすると、空の色が変わりはじめます。
橙から薄紫へ、薄紫から深い青へ。
一日のうちでも、この移り変わりの時間がいちばん好きかもしれません。
そして空が群青に染まるころ、水面には細かなさざ波が立ちはじめました。
風が通り抜けるたびに、空の青がきらきらと細かく揺れて、まるで小さな光の粒が水の上で踊っているようです。
空を映した水は、空そのものよりも少し穏やかな顔をしている気がします。
同じ青なのに、揺れているぶんだけ、やさしく見えるのです。
音が少なくなっていく
夕暮れの水辺は、音までやさしくなります。
遠くで鳴く鳥の声、さざ波が岸にふれる小さな音、風が草を揺らす気配。
日中なら聞き逃してしまうような音が、ひとつずつ耳に届いてきます。
スマートフォンはポケットにしまったまま。
何も確認せず、何も返信せず、ただ目の前の青を見ている時間は、思っていたよりずっとぜいたくでした。
癒しは、探しに行かなくていい
癒されたい、と思うと、遠くへ出かけなければいけない気がしてしまいます。
でも、本当はこうして近くの水辺まで歩くだけでも、心は十分にほどけるのだと思います。
空はいつも、同じ時間に色を変えています。
水はいつも、それを静かに映しています。
私たちが立ち止まりさえすれば、その景色はちゃんとそこにあるのです。
帰り道のこと
空がすっかり深い群青に沈んだころ、私はゆっくり立ち上がりました。
来たときより、足取りが少し軽くなっています。
さざ波に揺れていた青を思い出しながら歩く帰り道は、不思議と、心の中まで静かでした。
もし今日、少しだけ疲れているなら。
夕暮れの水辺で、空を映す群青のさざ波を眺めてみてください。
きっと、ほんの数分で、呼吸が深くなるはずです。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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