2026年10月16日金曜日

癒される秋の無人駅と一両電車

癒される秋の無人駅と一両電車

 ホームに降り立った瞬間、まず耳に入ってくるのは「音のなさ」です。

改札はなく、駅員さんもいません。あるのは、色あせた木のベンチと、錆びかけた駅名標。そして、足元に積もった落ち葉だけ。

秋の無人駅には、時間を急かすものが何ひとつありません。

落ち葉を踏む音が、いちばんのBGM

ベンチの横には、風に運ばれてきた紅葉やいちょうの葉が、ホームの端に小さな吹きだまりをつくっています。

一歩ふみ出すたびに、かさ、かさ、と乾いた音がします。

街にいると、自分の足音さえ意識しないまま、毎日を急いで歩いています。でもここでは、足音が主役になります。自分が歩いている、ただそれだけのことが、ちょっとおもしろく感じられるのです。

線路の向こうは、ただ秋

ホームから線路の先をながめると、稲刈りを終えた田んぼ、少し赤く染まった山の斜面、ところどころに立つ柿の木が見えます。

どれも特別な絶景ではありません。けれど、「何もしなくていい景色」というのは、思っている以上に心をゆるめてくれます。

秋の日差しは夏ほど強くなく、ベンチに座っていると、背中にじんわりと日向のぬくもりが届きます。

一両電車がやってくる

どれくらい待ったでしょうか。遠くのほうから、やさしいエンジン音が近づいてきます。

線路の先に姿を見せたのは、たった一両だけの電車。

長い編成の電車のような迫力はありません。でも、ことこと、ことこと、田んぼのあいだをゆっくり進んでくる姿には、不思議な愛らしさがあります。

「ひとりで頑張ってるなあ」

そんなふうに、つい心のなかで声をかけたくなってしまいます。

停まったドアが、ぷしゅっと小さく開きます。乗る人は、ほとんどいません。降りる人も、ほとんどいません。それでも一両電車は、いつもと同じように、そこに停まってくれます。

窓際の席で、秋をいっしょに走る

乗り込むと、車内はとても静かです。

座席のモケット、床にこぼれる日だまり、ガタン、ゴトン、と揺れるリズム。窓の外を、すすきの穂や柿の実、色づく木々が、ゆっくり流れていきます。

スマホを見るのがもったいなくなって、気づけばずっと窓の外ばかり見ていました。

速く着くことが目的ではなく、揺られている時間そのものが、ごほうびのような乗り物。一両電車には、そんな力があるように思います。

「待つ」ことがやさしい時間になる

無人駅では、電車が来るまでの時間も、なんだか違って感じられます。

待ち時間は、ふだんなら「無駄な時間」かもしれません。でも、秋の無人駅で過ごす待ち時間は、風の音を聞いたり、空の色の変化を眺めたり、ぼんやりしたりするための、大切な余白になります。

何も予定のない時間があるって、思っていたよりずっと贅沢です。

おわりに

秋の無人駅と、一両電車。

どちらも小さくて、静かで、派手さはありません。それでも、その小さな静けさが、疲れた心にそっと寄り添ってくれます。

忙しい毎日のなかで、ふっと深呼吸したくなったら。

落ち葉の音がするホームで、ことこと走ってくる電車を、ただ待ってみてください。きっと、心のスピードが少しだけゆっくりになるはずです。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます

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