窓の外が、ふっと明るくなる瞬間があります。
トンネルを抜けたのか、住宅街が途切れたのか。気づくと電車は、見渡すかぎりのすすき野原の中を走っています。秋の夕方、傾いた陽の光を受けて、穂の一本一本が金色にきらめいている。そんな景色に出会えた日は、それだけで「今日はいい日だったな」と思えてしまいます。
秋の電車は、時間がゆっくり流れる
ガタン、ゴトン。一定のリズムで体が揺れて、車内にはやわらかな西日が差し込みます。
向かいの席の人の頬も、吊り革も、座席の模様も、全部がほんのり蜜柑色。急ぎの用事も、考えごとも、この光の中ではちょっとだけ輪郭がぼやけていきます。
スマホを見る手を止めて、ただ窓の外を眺める。それだけの時間が、実はいちばん贅沢なのかもしれません。
すすき野原は、風を見せてくれる
すすきの穂は、風が吹くたびにさあっと同じ方向へ傾きます。
風は目に見えないはずなのに、野原の上では、風の通り道がそのまま波になって見える。金色の海が、ゆっくり、ゆっくり、息をするように揺れているのです。
電車の速度で流れていく景色なので、ずっと眺めていられるわけではありません。だからこそ、一瞬一瞬が心に残ります。
夕景が、一日を静かに締めくくる
空は、茜色から少しずつ紫がかった色へ。
遠くの山の稜線がシルエットになって、その手前ですすきだけが最後の光をつかまえています。この「光が名残惜しそうに残る数分間」が、秋の夕景のいちばん好きなところです。
電車が小さな駅に停まると、ドアが開いて、少し冷たい秋の空気と草の匂いが入ってきます。ほんの数秒なのに、そのひんやりした空気まで含めて、景色の一部だったように感じます。
癒しは、特別な場所に行かなくてもいい
癒されるために遠くへ出かけなくても、いつもの電車の窓が、こんなにきれいな景色を見せてくれることがあります。
大事なのは、窓の外を見るタイミングを自分に許してあげること。ほんの少し顔を上げるだけで、一日の疲れがほどけていく景色が待っているかもしれません。
もし今度、秋の夕方に電車に乗る機会があったら、窓側の席に座って、外をぼんやり眺めてみてください。金色に揺れるすすき野原が、きっとやさしく迎えてくれます。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます
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