2026年10月10日土曜日

癒される星空と赤外線ストーブ

癒される星空と赤外線ストーブ

 冬のはじまりの夜だった。

仕事を終えて家に帰ると、部屋の空気は外とほとんど変わらないくらい冷えていた。コートを脱ぐ前に、まず赤外線ストーブのスイッチを入れる。かちり、と小さな音がして、しばらくすると、細い管の奥からオレンジ色の光がじわりと立ちのぼってきた。

この光が、私は好きだ。

派手に部屋を温めるわけではない。ただ、ストーブの前に立つと、手のひらや頬にやわらかい熱がそっと触れてくる。陽だまりを一つ、部屋の中に連れてきたような温かさだ。

マグカップに白湯を注いで、ベランダの窓のそばに座布団を引き寄せた。電気は消したままにする。ストーブのほのかな赤い光だけが、部屋の壁をぼんやり照らしていた。

カーテンを少しだけ開けると、窓の向こうに夜空が広がっていた。

冬の空気は澄んでいて、星の輪郭がくっきりしている。街の灯りに負けそうな小さな星もあれば、ひとつだけ堂々と輝いている星もある。じっと見ていると、ときどき、ほんのわずかに瞬いた。

ふと、こんなことを思う。

あの光は、ずっとずっと昔に星を出発して、長い長い時間をかけて、今この窓まで届いたものなのだ。私が忙しさにまぎれて、ため息をついていた日も、誰かにうまく言葉を返せなかった日も、あの光は黙って旅を続けていた。

そう考えると、今日の小さな疲れが、少しだけ遠くへ行ってしまうような気がした。

背中のほうでは、ストーブがじんわりと熱を送り続けている。窓の外は凍えるほど冷たいのに、こちら側はこんなに穏やかだ。この温度の差がなんだか不思議で、そしてとても贅沢に思えた。

白湯をひと口飲む。喉を通って、胸のあたりがほっと緩んでいく。

昼間のことを、ぼんやり思い出していた。うまくいかなかったこと、言いそびれたひとこと、時間に追われて飲み込んだ気持ち。けれど星空の下では、どれもそんなに大きなことには思えなかった。

星は何も言わない。ストーブも何も言わない。ただそこにいて、光を届けてくれるだけだ。

それだけで、人は案外、ちゃんと癒されるものなのかもしれない。

しばらくすると、ストーブの熱で足先まで温まってきた。膝にブランケットをかけ直して、もう一度空を見上げる。さっきは気づかなかった小さな星が、ひとつ増えていた。

夜は静かで、部屋は温かい。

今日は何かを頑張らなくてもいい。何かを決めなくてもいい。ただ、星を眺めて、ストーブのぬくもりに包まれていればいい。

そんな夜があってもいいと、赤い光のそばで、私はゆっくり目を閉じた。


寒い夜は、つい早く布団に入りたくなりますが、たまには電気を消して、ほのかな暖かさと星空だけで過ごす時間もおすすめです。ほんの十分でも、一日の終わりの気持ちがやわらかくなりますよ。

※赤外線ストーブを使うときは、近くに燃えやすいものを置かず、就寝時や外出時は必ず電源を切るようにしてくださいね。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます

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