2026年9月20日日曜日

癒される秋夜のフェリーの甲板

癒される秋夜のフェリーの甲板

エンジンの低い唸りが、足の裏からゆっくりと伝わってくる。フェリーの甲板に出ると、真っ先に感じるのは冷たく澄んだ夜風だった。昼間の暑さの名残はもうどこにもなく、代わりに秋らしい涼やかな空気が頬を撫でていく。

手すりに寄りかかり、暗い海面を見下ろす。船の灯りに照らされた波が、白い泡を立てながら後方へと流れていく。その規則的なリズムを目で追っているだけで、心の中のざわつきが少しずつ静まっていくのがわかった。

顔を上げると、そこには街の明かりが届かない、驚くほど濃い夜空が広がっていた。都会では見ることのできない数の星が瞬いている。ひとつ、またひとつと星を数えているうちに、時間の感覚さえ曖昧になっていく。

甲板には自分以外にも数人の乗客がいたが、誰もが静かにその景色に見入っていた。言葉を交わす必要はない。同じ夜を、同じ船の上で共有しているという、それだけで十分だった。

遠くに見える対岸の灯りが、少しずつ大きくなっていく。まだ着くまでには時間があるようで、その事実にどこかほっとする。この心地よい時間が、もう少しだけ続いてほしいと思った。

冷たい風に少し身体が冷えてきた頃、上着の襟を立てながら、ふと今日一日を振り返る。慌ただしかった日常も、この甲板に立っている間だけは、遠い出来事のように感じられた。

秋の夜、揺れる波の上で過ごすひとときは、忙しさに追われる毎日の中で、心をそっと解きほぐしてくれる。フェリーが進むたび、後方へと流れていく光の帯を眺めながら、また明日からの日々を穏やかに迎えられそうな気がした。


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