2026年9月19日土曜日

癒される秋の畳の匂いと障子越しの光

癒される秋の畳の匂いと障子越しの光

秋が深まる頃、ふと足を踏み入れた和室で、い草の香りに包まれる瞬間がある。畳の匂いというのは不思議なもので、青々とした草の香りに、どこか土や日向のにおいが混ざり合い、鼻から胸の奥まで静かに染み渡っていく。それは新しい畳ならではの強い香りではなく、長い年月をかけて部屋に馴染んだ、少し落ち着いた甘さを帯びた匂いだ。夏の湿気が抜け、乾いた秋の空気とともに漂うその香りは、なぜか懐かしさを連れてくる。

障子越しに差し込む光もまた、秋という季節をやわらかく物語っている。夏の日差しのように強く照りつけることはなく、白い和紙を通して部屋いっぱいに広がる光は、まるで薄い綿でこしたように優しい。障子の格子が床や畳の上に淡い縞模様を落とし、時間が経つにつれてその影はゆっくりと角度を変えていく。風が吹くたびに庭の木々が揺れ、その影が障子の表面をかすかに震わせる様子は、まるで一枚の絵のように静かで美しい。

畳の上に座り、背中を柱にもたれさせながら、そのやわらかな光を眺めていると、時間の流れがいつもよりゆっくりと感じられる。遠くから聞こえてくるのは、金木犀の香りを運ぶ風の音や、どこかで鳴く鳥の声、あるいは庭先で揺れる木の葉の音だけ。スマートフォンの画面から一度離れ、こうした静かな時間に身を置くと、自分の呼吸のリズムまでゆっくりと整っていくような感覚がある。

畳の縁に指先を滑らせながら、い草の香りを深く吸い込むと、子どもの頃に祖父母の家で過ごした午後のひとときがふと蘇る人も多いのではないだろうか。障子から漏れる光の中でうたた寝をしたあの感覚、畳の上でごろりと横になったときのひんやりとした心地よさ。そうした記憶が、匂いと光という二つの感覚を通して、静かによみがえってくる。

秋の澄んだ空気の中で味わう畳の匂いと障子越しの光は、特別な出来事があるわけではないのに、心の奥深くをそっと癒してくれる。忙しない日常の合間に、こうした和室のひとときに身を置くことで、季節の移ろいと自分自身の心の状態に、あらためて気づかされるのかもしれない。


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