祭り囃子が鳴り止んだ村の広場には、まだ提灯の灯りがぽつりぽつりと揺れている。人々の笑い声も、太鼓の音も、もうどこにも聞こえない。代わりに響くのは、虫たちの澄んだ声と、遠くで风に揺れる笹の葉音だけだ。
夜店の跡には、かき氷の赤いシロップの染みや、輪投げの輪っかが一つ、寂しそうに転がっている。昼間の熱気が嘘のように、今はひんやりとした夜風が頬をかすめていく。夏の終わりが近いことを、その風の温度が静かに教えてくれる。
神社の石段に腰を下ろせば、遠くにまだ焼け残る夕焼けの名残と、少しずつ濃くなっていく藍色の空が同時に見える。境内の木々からは、祭りの間中鳴り続けていた蝉の声がいつの間にか止み、代わりにコオロギの声が静かに満ちていく。季節が入れ替わる、その一瞬の境目に立っているような気がしてくる。
片付けを終えた提灯が一つずつ消えていくたび、村はゆっくりと本来の静けさを取り戻していく。誰もいない参道に、線香花火の燃え残りの匂いがふわりと漂う。それは寂しさというより、今日という一日が確かにここにあった証のようで、どこか温かい。
祭りの後の静寂は、賑わいの余韻をそっと抱きしめてくれるような、優しい時間だ。夏が静かに幕を閉じていくこの一瞬に、心がすっとほどけていくのを感じる。
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