2026年9月15日火曜日
癒される夏の終わりの夕焼けと自転車
夕方の風が、少しだけ涼しさを含むようになった。ついこの前まで肌に張り付くようだった熱気が、いつの間にか和らいでいる。夏の終わりというのは、こんなふうに静かに、誰にも気づかれないまま近づいてくるものなのかもしれない。
自転車のペダルを踏み込むと、車輪が軽やかに回りはじめる。カラカラという音が、住宅街の路地に小さく響く。空を見上げると、燃えるようなオレンジ色が、少しずつ紫へと溶けていくところだった。夏の終わりの夕焼けは、真夏の鮮やかさとは違う、どこか切なさを含んだ美しさを持っている。
土手沿いの道を走っていく。両側に伸びる草はまだ青々としているけれど、その先端はほんの少しだけ色を変えはじめていた。季節が入れ替わる瞬間というのは、こんな小さなところに、ひっそりと現れるものなのだろう。
橋を渡るとき、川面に夕焼けが映り込んでいるのが見えた。水面が風でゆらぐたびに、オレンジ色の光が細かく揺れて、まるで無数の小さな灯りが川を流れているようだった。自転車を止めて、しばらくその景色を眺めていた。特別なことをしているわけではないのに、なぜかこの時間がとても贅沢に感じられる。
遠くから聞こえてくる蝉の声も、真夏のころより少し弱々しい。それでも、まだ夏がここに残っていることを、精一杯伝えようとしているようにも思えた。夕暮れの中でその声を聞いていると、今年の夏の記憶が、ゆっくりと胸の中で整理されていくような気がする。
また自転車を走らせる。風を切って進むたびに、頬に触れる空気が少しずつひんやりとしてくる。この心地よさは、真夏には味わえないものだ。暑さが和らぎ、光がやわらかくなり、季節がそっと次の扉を開けようとしている。そんな変化の途中に立ち会えることが、なんだか嬉しかった。
家路につく途中、空はすっかり群青色に近づいていた。それでも地平線の際には、まだ橙色の名残がにじんでいる。自転車を漂わせるようにゆっくり走りながら、今日という一日が、静かに夏の終わりへと重なっていくのを感じた。
来年もまた、この夕焼けを自転車で追いかけたい。そう思わせてくれる、穏やかで優しい夏の終わりの一日だった。
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