2026年9月18日金曜日

夏の終わりの海の見える無人駅

夏の終わりの海の見える無人駅

ホームに降り立つと、真っ先に潮の香りが鼻をくすぐります。改札もなければ駅員もいない、小さな無人駅。錆びついた看板と、色あせたベンチだけが、この駅の歴史を静かに物語っています。

線路の向こうには、どこまでも続く海が広がっています。夏の終わりの日差しは、真夏のあの刺すような強さをすでに失い、代わりに柔らかく、どこか物悲しい光を水面に落としています。波の音が遠くから届き、蝉の声もいつのまにか勢いを弱め、かわりに秋の虫の音がかすかに混じり始めています。

ホームの端に立って海を眺めていると、時折、白いカモメが視界を横切っていきます。潮風が頬をなでるたびに、夏休みの思い出がふっと蘇るような、そんな不思議な感覚に包まれます。

線路の上には、いつ来るとも知れない電車を待つでもなく、ただ景色を眺めるためだけにここへ来た旅人の姿もちらほら。誰も急いでいません。時計の針の進み方さえ、この駅では少しゆっくりに感じられます。

木造の待合室をのぞくと、古びた木の椅子が並び、壁には色褪せた観光案内のポスターが貼られています。窓越しに差し込む夕暮れ前の光が、埃っぽい空気の中でやわらかく輝き、まるで時間が止まったかのような静けさをたたえています。

やがて日が傾き始めると、海と空の境界線がオレンジ色に染まっていきます。無人駅のホームから眺めるその夕景は、何も飾らない、ただそこにあるだけの美しさ。誰に見せるためでもなく、ただ静かに、毎日繰り返されてきた景色なのだと思うと、なんだか胸が熱くなります。

夏が終わりゆくこの季節、忙しい日常から少し離れて、こんな無人駅のベンチに腰掛け、海を眺めながらぼんやりと過ごす時間があってもいいのかもしれません。何もしない贅沢、何も考えない静けさが、そこにはきっと待っています。


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