2026年9月16日水曜日
癒される都会の夏の終わりの空
夕方の五時を過ぎたころ、オフィス街のビルの隙間から見上げた空が、いつもと違う色をしていることに気づいた。
つい先週まで真っ白に近いほど眩しかった太陽の光が、少しだけ柔らかくなっている。強すぎた蝉の声も、どこか間隔をあけて鳴くようになった。夏の終わりは、いつも音や光の「密度」が薄まっていくところから始まる気がする。
都会の空は、田舎のように何もない大きな空とは違う。ビルの窓ガラスに反射した夕焼けが、もう一つの空を作り出す。オレンジ色とビルの無機質なグレーが混ざり合って、不思議とやわらかい風景になる。交差点の信号待ちで、ふと顔を上げただけなのに、いつもより少し長くその空を見てしまった。
高層ビルの合間を縫うように、うろこ雲がゆっくりと流れていく。真夏には見られなかった形の雲だ。入道雲のように主張することなく、静かに秋の気配を運んでくる。ビルの屋上に設置された室外機の音や、遠くを走る電車の音までもが、なぜかこの時間だけは景色の一部のように優しく響く。
駅のホームに立って電車を待つ間、線路の向こうに広がる空を眺める。夏の終わりの都会の空は、忙しなく行き交う人々の頭上で、誰にも気づかれないまま少しずつ色を変えていく。仕事帰りの疲れた体に、この一瞬の空の色がじんわりと染み込んでいくようだった。
まだ半袖でも過ごせる気温なのに、吹く風だけは確かに変わっている。ビルとビルの間を抜けてくる風が、真夏のねっとりとした熱気ではなく、どこかさらりとした涼しさを含んでいる。それに気づいた瞬間、今年の夏ももう終わりに近づいているのだと実感する。
都会に住んでいると、季節の変化になかなか気づけないと思われがちだ。けれど、ビルの隙間から見える一片の空、ふと吹き抜ける風、蝉の声の変化——そうした小さなサインの中に、確かに夏の終わりは存在している。
派手さはないけれど、慌ただしい毎日の中でふと立ち止まって見上げたくなる、そんな都会の夏の終わりの空だった。
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