2026年9月4日金曜日
癒される森
朝の森に足を踏み入れると、まず耳に届くのは静けさそのものだった。都会の喧騒とはまったく違う、生き物たちの気配だけが満ちる空気。木々の隙間から差し込む光は柔らかく、地面に落ちた葉の上でゆらゆらと揺れている。
一歩ずつ土を踏みしめるたびに、かすかに湿った土と落ち葉の香りが鼻先をかすめる。それは決して強い香りではないけれど、深く息を吸い込むだけで肩の力がすっと抜けていくような、そんな不思議な力を持っている。
見上げれば、高く伸びた木々の梢が重なり合い、まるで緑の天井のようだった。風が吹くたびに葉と葉がこすれ合う音が響き、その合間には小鳥のさえずりが混じる。決して統一されたメロディーではないのに、なぜかひとつの音楽のように耳に心地よい。
森の中を歩いていると、時間の感覚が少しずつ曖昧になっていく。スマートフォンの通知も、仕事の締め切りも、ここでは遠い世界の出来事のように感じられる。あるのはただ、目の前の道と、その先に広がる緑と、自分の呼吸だけ。
途中、小さな沢のせせらぎに出会った。透き通った水が石の間を縫うように流れ、日差しを受けてきらきらと輝いている。しばらくその場に腰を下ろし、水の音に耳を澄ませていると、頭の中の雑念がひとつ、またひとつと洗い流されていくような感覚があった。
森という場所は、何かを教えてくれるわけでも、答えをくれるわけでもない。ただそこにあるだけで、人の心をそっと軽くしてくれる。忙しない日常の中で疲れを感じたとき、こうした緑の静けさを思い出すだけでも、少し息がしやすくなるのかもしれない。
もし機会があれば、近くの森や林道を歩いてみてほしい。特別な準備はいらない。ただ歩いて、耳を澄まし、深く息を吸うだけでいい。それだけで、忘れていた穏やかな時間を取り戻せるはずだ。
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